低炭素社会の実現に向けた取り組み

省エネルギー対策

 製造プロセスの現状

    国内のセメント製造プロセスは、かつて、熱効率の劣る湿式キルンや、予熱装置を有さない乾式キルンが主流でありました。その後、1960年代に入り、省エネルギーならびに生産量増大の観点から、予熱装置(プレヒータ)を有する乾式キルンの製造様式であるSPキルンや、仮焼炉を有してさらに生産効率の高いNSPキルンへの転換が進み、国内では1997年にその転換が完了しています(図−1 参照)。
  図−2はセメント製造用熱エネルギー原単位の推移を示したものです。1970年から1990年にかけて行われた製造様式の転換に伴って大きく低減していることが分かります。実際、この転換によって、セメント製造用熱エネルギー原単位は約四割、原油換算で280万kl分が低減されました。
  一方、近年は製造様式による大きな省エネルギーが望めないため、個別設備の更新やアップグレードによる省エネ化や、エネルギー代替廃棄物の使用拡大による化石系エネルギーの低減に努め、エネルギー原単位の低減に努めています。

図-1 国内のキルン様式別生産能力構成比の推移

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図-2 セメント製造用熱エネルギー原単位の推移

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  図−3に様式別のエネルギー原単位および生産効率の比較を、図−4に予熱装置を有するキルンにおける熱回収の特徴を示します。予熱装置を有するキルンは旧様式に比べ熱エネルギー原単位が大きく低減していることが分かります。これは、図−4で示しますように、投入された熱エネルギーを回収することによってエネルギー効率を上げていることが分かります。
  これらの予熱装置を有するキルンは、国際的にも最も熱効率のよいセメント製造様式として認められており、新興国で設立される新規の工場では最新鋭の設備を有するSPキルン、NSPキルンが導入されています。

図-3 キルン様式別のエネルギー原単位および生産効率の比較

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図-4 最新の予熱装置を有するキルンにおける熱回収の特徴

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 製造プロセスの現状

  製造様式による大きな省エネルギーが望めない現状、原料工程、焼成工程、仕上工程の各製造工程において(セメントができるまで(製造工程)参照)、いろいろな省エネ技術・設備を導入し省エネルギーに努めています。
  セメント工場で用いられている主な省エネ設備の事例を下記に示しますが、詳細については、生産技術専門委員会報告書T-22をご参照ください。

工程-対象エネ 省エネの原理 具体的な設備・技術 効率
原料、仕上げ-
電力エネ
原料の粉砕に高効率の粉砕機を導入する。同様に、熱エネルギーとして用いる石炭や混合材の高炉スラグの粉砕にも利用する。 竪型ミル ・原料粉砕機として導入した場合、原料工程の電力原単位を約30%低減する。
原料、仕上げ-
電力エネ
微粉の循環量を少なくして分級効率を上げ、粉砕能力増と電力原単位を低減する。 セパレータの改善・効率化 ・粉砕能力を15〜25%向上させ、電力原単位を10〜20%低減させる。
原料、仕上げ-
電力エネ
粉砕の工程に粗砕のための予備粉砕機を導入し、粉砕効率を向上させる。 ローラーミル型予備粉砕機 ・仕上げ工程への導入の場合、仕上げ工程の電力原単位10〜20%低減する。
焼成-
熱エネ及び電力エネ
効率のよい冷却機を導入し、熱回収率の向上と電力原単位の低減を行う。 エアビーム式等の高効率冷却機 ・電力原単位として0.5〜1.5kWh/t-cli程度低減する。併せて、熱エネ原単位として42〜167kJ/kg-cli程度低減する。
排熱回収-
熱エネを電力エネとして回収
焼成工程で発生するガスに含まれる熱をボイラーで回収し、その蒸気を用いて発電を行う 排熱発電 ・約35〜40kWh/t-cliの電力を回収できる。

 熱エネルギーの有効利用

図-5 セメント工場の熱エネルギーの流れの一例

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  製造プロセスの項でも説明したように、最新の予熱装置を有する乾式キルンのシステムは、熱エネルギーを有効に利用することに特徴があります。クリンカ焼成目的に投入された熱エネルギーの余剰分を「原料の予熱および仮焼」に用い、さらにその余剰分を「発電」「原料・石炭等の材料の乾燥」等に用い、可能な限り回収しています。
  ある工場の事例では、投入した熱エネルギーの約半分がクリンカ焼成に用いられ、製造工程で発生するガスに含まれる熱エネルギーを発電や原料・石炭等の乾燥に用いることによって回収し、最終的に投入分の約80%のエネルギーを有効に利用していることがわかります。

 電力エネルギーの有効利用

  セメント製造では、熱エネルギーとともに、各種粉砕のための粉砕機や分級機、クリンカ冷却のための空気吹き込みを始めとする数多くの送風機、回転窯の運転、等種々の設備で電力エネルギーを必要とします。電力エネルギーは熱エネルギーのような回収により効率を上げることは難しいため、単位電力あたりの作業効率を上げることにより省エネルギーを実施しています。
  電力は地域の電力会社から購入する以外に、自家発電設備を有しているセメント工場もあります。自家発電設備では、キルンと同様に可燃性廃棄物の使用拡大に務め、化石系のエネルギー使用量の削減を進めています(次項参照)。また、前述の「熱エネルギーの回収による発電」は排熱発電と呼ばれ、発電目的のためのエネルギー投入を必要としない自家発電の一つとしてセメント製造に利用されています。

図-6 電力エネルギー原単位の推移

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なお、(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)が2010年時点のセメント部門におけるエネルギー原単位の国際比較を分析しています。こちらをご参照ください。
http://www.rite.or.jp/system/global-warming-ouyou/modeltodata/energyefficiency2/